浮かんでは消える泡のように

仕事中だろうが、飲み会中であろうが、普通に熟睡するffですよー。




いきなりだが『ポップ』もしくは『ポップカルチャー』と呼ばれる概念がある。


日本語にすると『大衆的』とか『流行りの』といったところだろうか。




俺はどうもこのポップって奴が苦手で、未だに上手く付き合うことができない。
余計苦手になっているという説もある。




ポップは言葉というより概念という方がしっくりくるかもしれない。
とにかくこのポップがもう何だか不気味なのだ。



まずポップは形がない。
その時々でこれはポップだとかこれはもうポップじゃねぇとかがある。
まぁ流行りとはそういうものなのだけれど。
もう自分の好きなものがその時代でコロコロ変わるってのがダメだ。
何かをずっと好きでいるのはポップじゃないらしい。


あまりに軸がないのがポップなのである。
嫌いな立場から表現させてもらうと、見境ナシなのだ、ポップっていう奴は。





しかもポップは大衆的だが普遍性はないという特徴もあるから困りものだ。
つまりみんな好きだポップだと言われて仕方なく無理矢理好きになってみると、
『何みんなのマネしやがってダッセー』てなことになりかねない。
多数派ってだけでそれが評価されるとは限らないのがポップである。
ポップってやつは乗るにも降りるにも色々とめんどうなのだ。




どこからともなくやってきて膨らんでは弾けて消えていく…
泡(ポップ)とはよく言ったものだ。
この言い回しは妙でポップにまつわる事象で唯一好きなところだったりする。




ポップを極めれば一躍人気者になれるのになー
でもやっぱめんどくさいなー。
もうそういうこと考えてる時点で俺はポップじゃないし、
人気も確かに実際ないわなー、


…などという非常にほっといて欲しい展開になってしまう辺り、やはりポップは俺の天敵と言えよう。





そういや思い出したことがあって。


話は先月の塾講時代の生徒たちとの焼き肉まで遡る。




奴らとはすごーく音楽の趣味が合ったのだった。




一人はそいつが中学のときから知っていた。
ミッシェル好きの姉を持っていたのでロックの英才教育を受けたようだ。
残念ながら奴の一番好きなヒップホップは俺の管轄外だが、
ミッシェルの他ACIDMANとかレイジとか好きなアーティストは割と被っていた。
リンキンパークを教えてもらったのもこいつからだったりする。
当時は何て下品な名前だと思ったが今思うと普通だよね。





成長したのは他の奴らだった。





一人は何とすっかりベンジーにハマっていた。
『せんせー、ブランキーって最高にイカすよな!』
なんて言うのだから大したものだ。
だいたい『イカす』って古めかしい表現が雰囲気だしてるぜ。
女がいようと気にせずカラオケで『SKUNK』歌うらしいからホンモノだ。





そしてハマーの弟もすっかりバンドマンらしくなっていた。驚きだ。
アジカンブラフマン、ジャンヌやムックもカバーする万能ぶりを見せ、
俺の好きなアーティストは言えば他の誰かは必ず好きという素晴らしい状況だった。




中でもミッシェルとブランキーの両巨頭はみんな好きだった。ロケンロー!




みんな…いや、違った。
正確には『一人を除いて』だった。




そいつは俺らのロッキントーク中にはほとんど入ってこなかった。
そして『お前はどのバンドが好きなん?』的な流れになり、ついに口を開いた。




『やっぱEXILEがヤバイっすよねっ!』




EXILE…。





こりゃまた最高にロックじゃない奴らが出てきたぞ。





最初は奴なりのジョークなのかと思ったがどうやら本気らしい。


放っておくと『歌詞がヤバイ』とか『声もヤバイ』とか言い出した。




確かにEXILEはヤバイ。
もちろん、本来の意味でヤバイ。




俺は他人の価値観をどうこう言うのは好きじゃない。
色んな価値観があっていいと思う。
故にそれに対してとやかく言うのは野暮以外の何物でもないと思う。








しかし…











やっぱりEXILEはねえー。






ないなー。


アレで感動できる意味がわからん。






まぁ売れてるから有名だし、女の子受けはかなり良い。
ここは下手に馬鹿にしてはいけない。


EXILEはヤバイ。それは良い以外なんだ。良い意味なんだ…。
自分に言い聞かせる。
俺は大人だff。他人の価値観は尊重すべきだ…。


そう、EXILEは間違いなくポップなのだから。







EXILE……?せんせー、ヤバイよこいつ!』


そうそう、EXILEはヤバイのだ。




『マジかよ〜あんなん好きなのかよ!ヤバくない?』


そうそうEXILEはヤバくない?




EXILEなんてウンコじゃん!ヤバイよ』


そうそうヤバイ。ウン………あ、あれ?




『ち、ちょっとEXILEサイコーじゃん。みんな好きだろ?俺間違えてる?せんせー』




………。











俺『EXILEはサイコー………』











『…にウンコだね!!!』











その後他にはコブクロORANGE RANGEと加藤ミリアが好きだという奴が総攻撃されたのは言うまでもない。
世間とは真逆の数的優位。
あの空間は確かにロックがポップを公開処刑していた。






『好きなジャンルがわかんねーよ!』


『女の子受けいいやつだけ聞いて何が面白いんだよ!』


『お前の好きなの他もウンコばっかだな!』




もうさながら非国民扱いである。
あんときは悪ノリして悪かった、Fくん。
あと、メシの場でウンコウンコ言ってすみません、店員さん。





しかし、楽しかったなー。




ささやかなアンチポップの夜に乾杯。
また飲もう、先生おごっちゃいます。


もちろん、EXILE好きの彼も。