懲りずに5章(長)

あらすじ


さらわれたのでアリアがヒロイン。


アベェル『おい、奥の方だ!』
カイーン「わかってる。指図するなッ!」


こんなときでも仲悪い二人です。
それにしてもどうやったらこの状況でさらわれるんだろう。誰かわかる?


アベェル『…いた!隠れてた!』
カイーン「わかりにくいラピュタネタを入れるな」


ちなみに冒頭のシーンね。


?「グリグリ…来やがったな」
?『女を先頭にするなんてバカな奴らだジョ』


薄暗い道の先にぼんやりとモンスターの姿が見える。
見覚えのあるシルエットだ。


アベェル『お、オマエらは!?』
カイーン「俺が先に言う!確か…ジャガーとジャック!」


?『違うジョ!あんなかませ犬たちと一緒にすんな!』
?「聞いて驚くグリ!」


『俺たちは……』




『グリムとジョー!!』






『かませ犬じゃねーかっっっ!』




5章 魔の組織


グリム『…グゥ』
ジョー「タイトルを挟んでやられたァ」
グリム『あんまりだ!』
ジョー「これじゃまるでCM中に凡退するバッターじゃん!」


アベェル『あーうるさいうるさい。序盤のザコボスは黙ってなさい』
カイーン「いずれお前ら程度より強い奴らがフィールドに出てくるようになる」
アベェル『このおばけキャンドルどもめ!
カイーン「このカンダダのこぶんどもめ!


『…せめておやぶんゴーストにして欲しかった…』


そう言い残すと二匹はワープで逃げていった。
ワープ使えるならもっと強くてもいいのにね。


捕らえられていたアリアが半ベソで駆け寄ってくる。


アリア「ふぇーごめんなさいー生まれてきてごめんなさいー死んでお詫びしますー」
アベェル『なんでそーなるっ!』
カイーン「さらわれるのはお前の仕事みたいなものだろう」


いや、違うと思う。


アベェル『まぁ何はともあれこれで次の大陸へ進めるな』


最深部にある古代装置に乗ると、物々しい起動音とともに不思議な光が三人を包んだ。


アベェル『おーすげー!ゲームみたいだ!』


…コホン


アベェル『あ、いや。…と、とにかくえーとアレだ』
アリア「でもさっきの悪魔さんたちは何だったんでしょう?」
アベェル『さぁ??』
カイーン「そんなことも知らんのか」




と、いうわけで場面は敵のアジトへ。





ーーー禍々しい障気が辺りを包む。
薄紫に彩られた道を歩く影が一つ。


「ーーー“アビス”に我らを呼びつけるからには相応しい用事があるのだろうな」


凛とした声が暗闇の空間に響く。
声の主は一見すると若い女性のようだが、背中に大きく生えた漆黒の翼が魔族であることを示していた。


『―――――――――――――もち、む、無論だ。我らが待ち望んだ邂逅なのだからな』


虚無の空間から声(ちょっとどもってる)がしたと思うと朧気なシルエットが浮かび上がり、やがてはいかつい甲冑を着た悪魔の姿になった。


「気配を消していたのに流石だな、“的確のカミーラ”とはよく言ったものだ」


カミーラ「いや、言われたことないんだけど…まぁいい。邂逅ということは遂に?」
「そうだ。………我らが渇水して待ち望んだ魔王様の復活だ」
カミーラ「…そうか。遂に目覚められるのだな、我らが魔王デュウ様が」
「あれ…も、もっと驚かないのか?」
カミーラ「…いや、精一杯ハイテンションなんだが…まぁいい。ルシファア、他の二人は?」


ルシファアと呼ばれた甲冑の男はかぶりを振る。やれやれ、といった具合に。


するとーーー



「四天王がリーダー、ルシファア様のお呼びジャー!」
「これはきっと大事なことに違いない!」
「四天王一の剣の使い手、この俺デス様!」
SHUGOUせよ!SHUGOUせよ!


バカな奴らがやって来た。


背中にバカでかい大剣を担いだ長髪の剣士風の悪魔を中心に小さな悪魔が二匹ついてきている。




カミーラ「騒々しいのがきたか…」
ルシファア「仕方あるまい。奴は四天王一のバカだ。それもとびっきりの、な」


「…グゥ、相変わらず俺たちのような下級悪魔にはアビスの障気はキツいジャ…」
デス『そうだな。ここは魔界の入口。この強ぇ障気に耐えられねぇとキツいな。行ってヨシ!』


帰ろうとする部下はよく見るとジャガーとジャック(かませ犬)だった。


ジャック「では帰りますです!」
デス「誰がデスだ!呼び捨てすんじゃねー!貴様SATSUGAIするぞ!
ジャガー「す、すみませんっ!これは呼び捨てたのではなく、語尾なんです………あっ
デス「またしてもかーっ!!」


カミーラ「…頭痛い」
ルシファア「……」


デス「よう、久々だなクソッタレども!…ん?ベルゼブブのクソガキがいねぇな。母乳の時間かァ?」
ルシファア「いや、違う。悪魔は哺乳類ではない」
カミーラ「普通にツっこんだ!」
デス「しかし何でテメェはいつもそんないかちィ鎧を着てやがんだ?見てるこっちがむさ苦しくなってくるぜクソッタレー!」


そう見るとカミーラとデスは肌が露出するほどだが、ルシファアは全身フル装備だ。


デス「ジャガーやジャックみてぇなクソッタレには魔界で一番障気の強いここはそんな装備が必要だが、俺らみてぇな選ばれしクソッタレには屁でもねぇだろーが」
ルシファア「私は貴様らの様な露出狂ではないからな。それに……えーと、アレだ。着心地がいいんだ。…じゃないな。時間をくれ
カミーラ(結局どっちもクソッタレなのか…)




そんなやり取りをしていたら、アビス全体に微かに、だが鋭い衝撃が走った。
次の瞬間ーーーー




『ーーーー…ん、何だ、ここは……』




声がした。
三人の魔族のちょうど頭上で。


その男は立っていた。
足元に何もない、不確かな空間に確かにその男は忽然と姿を現した。


「おぉ!魔王様の復活だー!これで世界は滅んだも同然だせー!キャッホゥ!」


バカがいち早く反応した。


『ーーーどこだ、ここ?何で俺はこんなとこに立ってるんだ?』


当の本人はまだ釈然としていない様子でかぶりをふった。
まるで何故こんな所にいるのか、自分は何者なのだーーーーというように。


ルシファア「ーーー永い昏睡の時を過ごされたのですから無理もございません。魔王さまは忌々しき勇者との戦いで傷を負われ療養されていたのです」


ルシファアとカミーラ、刹那遅れてデスが彼の前に跪く。


だがーーーー


へ?魔王?俺が???


当の本人がビックリしていた。


「えーと、アレ?今まで何してたんだ?勇者となんて戦ってたっけ?アレ、思い出せねぇ!名前…アレ、俺の名前は…」
ルシファア「魔王デュウ様でございます」
デュウ「デュウ?なんかダサくね?俺の名前こんなん?魔王なのに?なんか盗賊みたいなんだけど!」


魔王はこんらんしている!


デス「出たー!魔王48の禁じ手の一つ“一人メダパニだー!何て恐ろしい業なんだ……っ!」


カミーラ「いや、違うと思う


そんな魔王がまだ自分を取り戻していないとき、ブーン、ブーンという耳障りな音が辺りを包んだ。


ルシファア「これはーーー」
カミーラ「奴、か」


アビスの入口から現れたのは大量の蠅だった。その数はおびただしく、元々が薄暗いアビスの辺りを漆黒に染めていた。
よく見るとその蠅の中心に小さな悪魔の子がいた。魔界の蠅によってその身を浮かせている赤子の名をベルゼバブといった。四天王の最後の一人である。


ベルゼバブ「バブー(待たせたでちゅね)」
ルシファア「…なになに。“魔王様の復活めでたい”か。そうだな」
ベルゼバブ「バブー(ちげーよ)」
ルシファア「……うむ、その通りだな」
カミーラ「…何を言っているのかわかるのか?」
ルシファア「あ、あぁ。何となくだがな」
デス「俺にはバブーバブーとしか聞こえねーけどなー」
カミーラ「私もだ」
ルシファア「まぁ四天王のリーダーにもなるとこの位はな」
ベルゼバブ「バブー(おい、ちげーよ)」


デュウ「…なんか違うっつ言ってるみたいだけどな(ぼそっ)」


ルシファア「はっ、何か言われましたか魔王様!?」
デュウ「い、いや別に。ってか俺いまだにまったく思い出せないんだけど…」
ルシファア「心配には及びません。魔王様の中に宿る血が戦いの中で覚醒を促すことでしょう」
デュウ「うーむオレ、魔王?


デス「せっかく魔王様とオレら四天王が揃ったんだ。どうするんだ?今からでも地上に堕りておっ始めようか?」
ルシファア「魔王様、我らに何なりとご命令を」
カミーラ「我ら魔王様の手足となりご期待にそえて見せます」
ベルゼバブ「バブー(僕ちんはあんまし働かないけどねー)」


デュウ「え?オレが決めんの?」


『さぁ!』


『ご命令を!』




デュウ「えーとえーと…」






デュウ「か、各自自宅待機で!




『ははーっ!』





こうして世界の平和は守られていた。




次回「このままだと勇者いらなくね?」に続きます。