ハイヤニ

ハイヤニ





ハイヤニ








スペイーーーーーーン











…。






ffです。






男子三日すれば刮目せよ、という言葉がある。


男は三日すれば人が変わったように成長するぜ、という言葉だったような。




じゃあ女は変わらないのかというと、
女心は秋の空、みたいな言葉があったりする。


変わり易いのが本質か心かって違いなのかもしれないが、
実際あんまし違いってわからない。




まぁ生物である以上人は時とともに変わっていくものだ。
それが成長かどうかはわからないけど。




俺はと言うと、ちっとも成長してない。
電車は寝過すわ、仕事中に寝るわ、仕事中の電車も寝過すわ(合わせ技)…。
仕事もいっこうに効率あがんないしね。怒られ方もうまくなんない。慣れたけど。




俺の性格って基本は諦めが常にあるので、


あーまた失敗したー俺ってこういう奴なんだよなぁぁぁー


といってドンマイで終了なので結構振り返すんですわ。
まーある意味ポジティブ。


次はミスるなよー


ってのが、


次は100メートル10秒台で走れよー


みたいな感覚でいるからね。
ヘイ、カール!
多分次も無理だぜー。






で、何が言いたいのかというとウチの母ちゃんの話です。


自分でも今までの前フリは必要だったのか疑問ではあるが、
その辺りはそれこそ積極的にめつぶし草を喰らって欲しい。お竜に話しかけてもらいたい。
なんせ懲りないから俺。無駄な前フリはあんまやめられそうにない。




ということで今回の主人公こと母ちゃんだが、
独特な天然ぶりで当日記へ数々のネタを提供してくれている名スポンサーである。
(ズムサタのあっち向いてズーとか)
またウチは父・母・息子の少子高齢国家ニホンの典型的核家族だが、
父親とここ2年ほど口を聞いてないので、
家にいるときの唯一の会話相手である。
悲しい国家です、ニホンて。




そんな母ちゃんですが、天然以外の特長としては、


・ドンくさい(全く名前に関係ないのに学生時代のあだ名が“とんこ”)


・空気を読めない(今風に言うとKY)


・注意力散漫(テレビの字幕が目に入らないで“今どっちが勝ってる?”とか言う)


・過程を楽しめない(何でもすぐ結果とか犯人とか知りたがる)




……まぁボロクソに見えますが、仲がいいから言えるんですよ、たぶん。




そんな母ちゃんが最近一大決心をした。




52歳、はじめてのきょうしゅうじょ〜ブレーキってどこの外人助っ人だっけ〜




前からよく『そろそろ免許でも取ろうかな』とは言ってたけど、
正直この人に免許はムリだと思った。
理由はもう何も言わない。
ハンドル片手にパニックになる姿が簡単に想像できたからだ。
お魚くわえたドラ猫を裸足で駆けてくサザエさんくらい容易に想像できる。



いつも言ってることなんでまぁ今回もどうせ決心だけだろうと正直バカにしてました。
俺の母ちゃんなんだから実行力なんてある訳ねー、みたいな。






ところがある日。






『私免許取ることにした』


『ハイハイ』


『今回は本気だから』


『ハイハイハイハイ』


『ということで入学してきましたー』


『ハイハイハイハイ………………ハイ!?』




どうしたんだその決断力。




石橋を叩いて結局隣のコンクリートの橋を渡るような人なのに。
数十万の金を払って来たのだった。




正直もったいねーと思いましたわ。そう思いません?




実際初めてみると、
『全然覚えられなーい』
『若いコばっかりで居場所なーい』
『何度も教官に同じこと注意されるー』
などなど泣き声ばかり。


ほれみたことかと。


だからやめとけと言ったんだと。




しかし意外とめげない。




教習所でもらった試験対策のCDをいじったことのないパソコンで学習し始めたのだった。
まぁそれ俺のだけど。




それからの変化は劇的だった。




『仮免受かったー』


え、早!




『このパソコン終われないんだけど』


もうちょっと待てば落ちるから。




『高速乗って来た』


あれ、意外と問題なく?




『最近ズーミンは右向くことが多いよ』


それって4分の1くらい?




『卒業した!』


あれ、早くね??




『9時だから寝るわ』


それも早いな!




『今日試験受けてくる』


頑張って。





『ところでパソコンって電源消せないんだけど』


それはもういい。






『受かったーっ!』


おぉぉぉぉ!




凄い。何たる成長。
のび太が映画版のび太になったかのような成長だ。
これは何かを教わった気がする。
52歳の母ちゃんに可能性という存在を確認させてもらえるなんて。


色々見くびってました。あなたも俺自身も。




最近は失敗するにも挑戦するにも、
俺の性格ってこうだから、俺の本質ってこうだから、俺ももう年とったから…。
こんな逃げ道ばかり考えていた。
まぁどうせ無理だぞと。
できなくても仕方ないし、どうせできないんだから努力するだけムダ。


思えば逃げ道作ることばっかりの毎日になっていた。
一大決心した母親にも冷めた態度を取って。




しかし、あの日の母ちゃんは今まで俺が見たこともない、想像だってしなかった母ちゃんだった。


歳を取っていようが、


何度も諦めていようが、


周りからどう思われようが、




それこそそんなの関係ねぇ。






今回は母親にこんなに教えてもらうとは思わなかった。


いやー可能性って呼び込めるもんだね。素晴らしい。







『あ、そうそう』




ん?






『来週の頭に車くるから』











はやっ!!